新型コロナウイルスの影響で、不要不急の外出が制限されています。このまま感染者が爆発的に増えると「ロックダウン」になる可能性が出てきました。

ロックダウンとは、外出の禁止や、店舗閉鎖により感染の拡大を防ぐ施策です。海外ではすでに多くの国が実施しています。今回は、労務管理の観点から、ロックダウンに備えた会社の事前準備と、実際になったときに会社が対応しなければいけないことを解説します。

ロックダウンとはどういう状態?

ロックダウンとは、対象エリアの住民の活動制限を指します。日本のロックダウンがどの程度になるかは分かりませんが、海外ではすでに

・必要不可欠な外出(食料品の買い出しや病院への通院)以外の外出を禁止
・生活に不可欠なスーパーや病院・薬局以外のサービスは、営業中止
・会社への出勤の禁止

という状態の国が多くみられます。

日本の現行法では、ロックダウンの強制はできないため、あくまで要請になります(ただし、法改正が行われる可能性もあります)。ロックダウンになる期間も不明ですが、感染拡大の防止が目的であれば、1か月以上になる可能性は高いでしょう。

ロックダウン前に、会社がすべきこと3つ

ロックダウンになると、スーパーや病院・薬局以外の業種には、出勤停止要請がかかる可能性が高く、つまり多くの会社で自宅勤務が必要になります。

すべきこと① 自宅勤務が可能か確認し、対応する

実際に社員全員がリモートワークを行う場合、顧客や取引先にそれを周知し、売上への影響を最小限に食い止める必要が出てきます。

【顧客や取引先への周知で、事前に洗い出しが必要なこと】
・誰に連絡をしなければいけないか
・連絡の内容(ロックダウン時の連絡先や、案件の締切の変更など)
・どのタイミングで連絡を行うのか

ロックダウンは急に宣告されます。現場での判断では追い付かない部分もあるでしょう。準備期間がほとんどないと想像し、今から各方面への周知の準備を進めておくことをおすすめします。

すべきこと② 連絡手段を確保しておく

急なロックダウンは今まで経験したことのない状態ですから、社員もどう対応すればいいか分かりません。そのため、出社しなくても社員と連絡が取れるよう、その手段を確保しておく必要があります。

【確保しておきたい社員との連絡手段】
・Slack、LINE、チャットワークなど、オンラインでつながる仕組みを用意する
・電話連絡網をつくり、緊急時に全員に連絡が届くようにする
・携帯電話の番号だけではなく、固定電話の番号も管理しておく

チャットワークなどのコミュニケーションツールは、日頃の業務では使っていなくても、このような非常時には役立ちます。無料プランで構いません。社員全員が連絡用のアカウントを取得できるまで、サポートしておきます。

すべきこと③ 仕事ができなくなったときの補償を検討し、周知する

自宅勤務が可能かどうかは、会社によるでしょう。生活に関わらないものを扱う店舗などは、営業停止してしまえば利益はゼロになります。そのような業種の場合、社員は「ロックダウンになったらどうするんだろう?」という不安を抱えています。

【会社の方針として周知しておきたい、社員への補償】
・休業補償を行うので、皆さんの給与の約〇%は補償されます
・会社ではコロナ休暇を用意しています。安心してください
・会社として貸付制度を用意するので、金銭面に問題がある場合は会社に連絡してください

会社の方針が明確で、「守られている」という実感があれば、社員も安心して休めます。そして仕事をせざるを得ないときでも、できるかぎり協力してくれるでしょう。

なお、法律的にはロックダウン時に休業手当を支払う義務が発生するかどうかは、ロックダウン時の強制力によります。ロックダウン実行時に、国から休業手当の必要性も含めての発表があると思います。

会社として、公的な補助を受けつつ、雇用を守る

特別休暇の導入やリモートワーク、休業保障を行うと、会社の支出が増えてしまいます。そのため、社員への補償をどうするか決めきれない会社も多いのではないでしょうか。

国から新しい助成金が出ています。

【助成金が受け取れるのは】
・会社としてリモートワークを導入し、規程作成をしたり、機器を導入するとき
・特別休暇を導入し、規程作成をしたり、機器を導入するとき
・会社として、新型コロナの流行を理由に休業手当を行うとき

このような緊急時だからこそ、会社が社員に対し、何ができるかを考えましょう。

【ロックダウンになる前に、社員のためにできること】
・会社に食料の備蓄があるときは、社員に配布する
・一時的に給与が少なくなる社員のために、貸付制度を用意する
・どうしても出勤が必要なときはシフト制を取り、同じ時間帯に人が集まらないよう配慮する

【付録】ロックダウン時の、社員向けメール文面

文言は会社の状況に合わせて、適宜変更してください。

件名:【緊急・重要】新型コロナウイルス流行による、ロックダウンについての対応
お疲れ様です。管理部の鈴木です。新型コロナウイルスの流行に伴い、ロックダウンの可能性が出てきました。ロックダウンになったときの会社の対応が以下のように決定しましたので、周知します。会社としても、この未曾有の危機に対し、社内・社外ともにできることを探ってまいりますので、よろしくお願いします。
【ロックダウンとは】
ロックダウンとは対象エリアの住民の活動を制限することです。日本のロックダウンがどの程度になるかは分かりませんが、海外では
・必要不可欠な外出(食料品の買い出しや病院への通院)以外は外出を禁止
・生活に不可欠なスーパーや病院、薬局以外のサービスは営業を中止
・会社への出勤の禁止
という状態になっています。ロックダウンになる期間も不明ですが、1か月以上になる可能性は高いです。
【 会社への影響】
ロックダウンになると、生活に不可欠なスーパーや病院・薬局以外の業種の人は出勤停止になる可能性が高いです。つまり自宅勤務が必須になります。そのため、ロックダウン時に自宅勤務が可能な場合は、自宅勤務に移行します。仕事内容やセキュリティの関係で自宅勤務ができないときは、自宅待機となります。詳細は上長の指示に従ってください。
【自宅待機時の保障】
自宅勤務ができるときは、残業手当も含め、通常通りに給与を支払います。
自宅待機のときは、会社として以下の補償を用意しています。
自宅待機のときは平均賃金の6割を支給します。
参考|労働基準法ワンポイント解説(平均賃金)
会社として貸付制度を用意します。
月給の1か月分を上限に会社から貸付を行いますので、希望者は管理部に連絡してください。なお、返済は通常勤務が始まってから1年間の分割返済となります。
【ロックダウン後の連絡】
開始されたロックダウンは、いつ終わるかが不明です。ロックダウンになったときは、1週間に1回以上このメールアドレスに現状と会社の方針を送りますので、毎日1回はメールチェックを行ってください。
本件に関して不明な点がありましたら、管理部までご連絡ください。以上、ご対応よろしくお願いいたします。

まとめ

ロックダウンが発表されたのちは、その状況にすぐに対応する必要が出てきます。リモートワークに移行できるなら、すぐに社員全員に連絡して、リモートワークをスタートさせましょう。リモートワークができないときは、再度、社員への指示(自宅待機など)と保障の内容を送ります。その時点でのロックダウン解除日は分からないので、定期的に連絡をすることも伝えます。

緊急事態で全員が不安になるときだからこそ、会社の姿勢やスタンスをはっきり伝え、社員を安心させることが大切です。

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