助成金の不正受給は詐欺! 会社のリスクと、社外に依頼するときの注意点を知る

労務管理

国や自治体が推進する政策に合う活動をしている会社(又は組織)に対し、条件を満たせば支給されるお金「助成金」。

助成金の魅力はなにより「返済不要」であることです。特に、採用や研修などの人材育成になかなかコストをかけられない小さな会社なら「受給できるもんなら、いくらでも受取っておきたい!」と考えているはずです。

そんな中、最近問題となっているのが助成金の不正受給。あなたの会社も、申請の抜け道を知る代行業者や悪徳専門家から「うまいこと申請して、受給しませんか?」と持ち掛けられたこと、ありませんか?

しかし、2019年4月から、助成金の発覚したときのペナルティがとても厳しくなっています。それを知らずに「よく分からないから、社外に依頼しよう」と考えていると、会社が大きなリスクを背負うことになりかねません。

 

会社で受け取る助成金でできること

助成金は、さまざまな目的で活用できます。

■高齢者の雇用安定
■派遣社員や契約社員などを正社員化
■未経験者のトライアル雇用
■研修の実施
■健康づくり制度の整備

中でもよく活用されている助成金に、「キャリアアップ助成金 正社員化コース」があります。

「キャリアアップ助成金 正社員化コース」
内容:有期契約労働者もしくは無期契約労働者を正規雇用した場合に、助成金がもらえる
(※諸条件を満たす必要あり)

これは、契約社員や派遣社員を「正社員として雇用」した場合に、条件を満たすと受け取れる助成金です。契約社員や派遣社員として働く優秀な人材が、安定を求め、他の企業の正社員になってしまうケースがありますが、そのようなことを食い止めるために、この助成金が活用できます。

またこの助成金を使い、正社員に転換した人材の【更なるスキルアップ】を目指すべく、別の助成金で研修を行うことも可能です。

 

助成金は自社で申請できるのか

ぜひとも受け取りたい助成金の申請ですが、不慣れな人が行うと、非常に大変です。

 理由は下記の通りです。

■申請書類の手続きが煩雑
■必要書類の数が多い
■助成金の種類が多くて、自社がどれに申請できるかわからない

素人が申請すると、気が付かないまま条件に沿わない内容で提出するリスクもあり、最悪、助成金の受給ができなくなることも。

助成金申請が「大変」なのは、労務関係の書類を揃える部分です。日頃の労務管理がきっちりとできており、提出書類に不備がなく、すぐに揃えることができるのであれば申請はスムーズに進みます。ただし、そのような完璧な会社はほぼ存在しません。そのため自社内で完結できず、「助成金はややこしい」というイメージが付いているといえるでしょう。

 

社労士以外の助成金申請は、社労士法違反!

素人の助成金申請は、慣れないことの連続。時間と手間が相当かかります。本来の業務にも支障が出る可能性が高くなるため、「助成金取得の業者」や、手続きを得意とする「社労士」に頼むのが一般的。

しかし、基本的に社労士以外が、報酬を受け取って助成金を申請することは、社労士法に違反します。営業電話がかかってきたら、社労士事務所なのかどうかを確認すべきです。

ただし、素人が助成金申請を行うと、助成金の申請書類を作成するだけで数日間を費やすこともマレではありません。必要書類の入手からはじまり、さまざまなことを調べながら手探りで書類に記入していく必要があるためです。

また、就業規則をはじめとした「各種規程の整備」の必要に迫られることもあれば、場合によっては役所に直接出向く必要も出てきます。そのため、社労士に依頼をし、手間と時間を省く会社が多いのですが、注意しなくてはなりません。

 

申請を社外に依頼するデメリット

安易に依頼をする前に、デメリットを知っておきましょう。

デメリット①コストがかかる

自力で手続きを行えばお金はかかりませんが、社外に依頼するので当然お金がかかります。

依頼によってかかるコストは、基本的に下記の2点。

①    手続きなどを行ってもらう為の「着手金」
    助成金支給に成功した場合に支払う「成功報酬」

このコストをよしとするかは、 手間、そして不支給のリスクとの天秤です。

デメリット②抜け道を悪用している場合がある

社労士や代行業者は、助成金支給に成功しなければ「成功報酬」をもらうことができません。そのため、抜け道を悪用し、不正スレスレな手続きを行っていたり、実際に不正をしているケースもあるので、注意が必要です。

 

絶対にやってはいけない!不正受給の事例とは

不正受給の例をあげてみましょう。


虚偽の雇用実態で申請する
正社員として雇っているが、「契約社員です」と嘘をついて、正社員化の助成金をもらう。

やってもいない研修を申請する
実際は研修を行っていないのに、「研修をした」と嘘の事実を書いて申請する。

書類を偽造する
「対象労働者の出勤簿の写し」が必要であるが、日頃から出勤簿を付けていなかった…などのケースで、あとから適当な出勤簿を作成して、その写しを提出する。


残念ながら、「やっておいて」と社外に手続きを丸投げし、提出した書類のチェックをしていない企業が多いのも現状です。自社が不正受給していることに気付いていないケースも多々あるのです。

 

「安易な依頼」に注意! リスクは増大しています

当然ながら、不正受給が見つかると罰則があり、たとえ「助成金代行業者が勝手に不正を行ったのだから、うちの会社は知らない!!」と主張しても連帯責任は免れません。

主な罰則内容は下記の通りです。

すべての助成金に対して、今後5年間は助成金が支給されない

2019年4月より、不正受給を行った事業主に対する不支給期間が、3年間から5年間に延長されました。

不正受給した会社の関係会社にも、罰則は及ぶ

不正受給を行った事業所の役員等が、他の事業所の役員等になっている場合には、その事業所に対しても5年間は助成金が支給されなくなっています。

もちろん、関与した社労士や業者も、5年間は助成金が申請できなくなります。2019年4月以前は、不正受給があっても社労士には罰則がなかったのですが、法改正が行われ、「不正を見抜けなかった社労士も悪い」と、処罰されることになりました。

不正受給をした会社情報が公開される

不正受給を行った事業所名は、広く公開されます。

事業主の名称、代表者名、事業所の名称、所在地、不正受給の金額、内容などが、詳細にわたって公開されるので、会社ブランドも失墜し、採用にも響く可能性があります。さらに、取引先やユーザー、金融機関などのステークホルダーにバレてしまえば、取引停止や融資停止にもつがり、会社の信用は地に落ちてしまうでしょう。

それ以外にも、不正受給をした助成金の返還を求められたり、あまりにも悪質とみなされると詐欺罪で刑事告発されるというリスクもはらんでいます。ちなみに、実際に助成金を受給しなくても、申請するだけで不正受給になります。

しかし、上記のようなペナルティを知らずに、「ちょっと不正をしてでも、受給できたらOK」という意識で申請をしている会社があるのも事実。悪徳な業者はそのような会社にスルッと入り込みます。

 

こんな営業トークには注意が必要!!

会社が助成金申請を「自分事」として捉え、責任をもって対応しない限り、リスクを背負い続けることになります。もちろん、親身にサポートをしてくれる社労士も多くいるでしょう。しかしその反面で、「助成金申請で、お金がもらえますよ。抜け穴もあります。絶対バレません」と、甘い言葉で不正申請を持ちかけてくるような悪徳業者も存在します。

このような罠にひっかからない為に、下記のような営業トークには注意する必要があります。

提案時にお金のことしかいってこない

いくら申請費用が安くても、申請に関する注意事項や説明などをろくにせず、受け取れるお金のことばかり強調される場合は要注意です。

要件に当てはまらないのに、無理やり当てはめようとしてくる

これは、助成金の本来の目的から逸脱した行為です。

また、会社が不正受給で罰則を受ける可能性を無視しています。全く会社のことを考えてくれていないといえます。

助成金申請のみをサービスとしている

助成金申請は、その会社の労務管理全体を理解していないとできません。

「申請手続き」だけでなく、現状の労務管理状況や、トラブルのリスクまで幅広くサポートし、知識を持っているような社労士を選ぶことをオススメします。

 

助成金活用には正しい労務管理が必要

不正受給には罰則がありますが、それ以上に会社の信頼を地に落とすことにもなります。うまい話にのるのではなく、日々の労務管理もしっかり行いましょう。そうすれば、社外に依頼する場合でも、丸投げして進捗状況がわからなくなる可能性が低くなり、万が一悪徳業者が不正受給をしようとしていた場合にも、気が付けるでしょう。

不正受給は、従業員にもバレます。「会社が詐欺を行った」ことは、従業員の働く意欲を削ぎ、信頼関係を壊すという大きな影響を与えることを認識しましょう。

助成金は正しく申請・受給!
そして、会社や社員のためにフル活用してみてください。

 

 

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