今さら聞けない「健康経営」 社員の健康サポートは会社の社会的責任

労務管理

最近人事サイトなどで目にするようになった「健康経営」というワード。一見、会社の財務状況や経営方針の健全さのことかと思いがちですが、実はそうではありません。いや、実際に目指すのはそこなのですが、まずは「働く社員の健康から考えよう」という、基礎固めに関する取り組みなのです。今回は、健康経営について分かりやすく解説してみます。

健康経営とはなにか

健康経営とは、従業員の健康状態を良好に保つことで、結果的に利益を高める経営方針を指します。

健康状態が悪くなると、業務に対するモチベーションが低下し、結果的に利益が下がる恐れがあります。また、健康状態が悪い従業員が多い事実が一般に知られることで、株価が下がる可能性も否定できません。

健康な従業員が増えれば、それだけ業績向上に繋がります。そして、従業員を大切にして健康を思いやる取り組みをしていることを公表すれば、社会からの期待も高まり、企業イメージがアップするでしょう。

経済産業省は、健康経営に取り組む企業をわかりやすく公表するために、健康経営優良法人認定制度を導入しています。認定マークを付与しているため、健康経営に取り組む企業を一目で見分けられます。制度導入から3回目となる2019年度の認定では、大規模法人部門818法人、中小規模法人部門2,502法人が認定されています。

経済産業省 健康経営優良法人認定制度のページ

認定マークを取ることのメリット

経済産業省の健康経営優良法人認定制度のマークを取得するためには、経済産業省が定める基準を満たす必要があります。多くの企業は、認定マークの取得のために経営方針や福利厚生を見直すことになるでしょう。健康経営の検討材料として、認定マークを取得するメリットを詳しくご紹介します。

業績向上が期待できる

健康状態が悪いと、業務で実力を発揮できません。また、知識や技術を取り入れて成長する際にも、健康状態が良好でなければならないのです。

つまり、健康状態が悪い従業員が多いと、企業の成長性が低く、利益も得られにくいということです。健康経営で従業員の健康状態を良好に保つことで、パフォーマンスを発揮できるようになり、成長性も高まります。

従業員のパフォーマンスが発揮されると、業績向上や経営の円滑化に繋がります。

株価向上が期待できる

株価は、企業の業績だけではなく、評判も大きく関わっています。

国を挙げて働き方改革に取り組む昨今では、従業員の健康状態が悪くなるような経営は受け入れられません。逆に、率先して健康経営に取り組むことで企業のイメージが良くなり、株価向上が期待できます。

優秀な人材が集まりやすくなる

新卒や既卒、中途採用者は、いずれも企業の経営方針や福利厚生に注目しています。

優秀な人材は、自分の好きな会社を選べますが、従業員を大切にしていない会社は選びません。同じ給料であれば、福利厚生が充実しており、従業員の健康を気づかう会社に勤めたいと思うでしょう。そのため、健康経営に取り組むことで優秀な人材が集まりやすくなります。

優秀な人材が集まれば、業績や株価向上にも繋がり、結果的に企業の経営状況がより充実したものになるのです。

 

マークを取ることを目的にしてはいけない

認定マークを取得するメリットは多く、企業にとって魅力的なものです。だからといって、認定マークの取得を目的とした健康経営はしてはいけません。あくまでも、従業員と企業のために健康経営に取り組む必要があります。

福利厚生を充実させ、労働時間の削減に取り組むにしても、実際に恩恵を受けている従業員がわずかである場合、健康経営ができているとは言えません。

表向きだけ健康経営に取り組むことは、事実が一般に知られた際に大きなイメージダウンに繋がります。

 

心の健康もサポート メンタルへの気配りは会社の社会的責任

健康経営は、会社のリスクマネジメントにも繋がります。

昨今問題となっている会社員のうつ病の増加を受け、2015年12月1日から、従業員数50人以上の企業(事業場)で、「ストレスチェック制度」が導入されることなりました。

しかし、ただ単に社員のメンタル状況を把握するだけでは、意味がありません。「ストレスチェック制度」を活用し、社員の精神的負荷の状態を定期的に確認したうえで、本人に自覚・気付きを促し、メンタル不調を悪化させないようにサポートする必要があります。また、もしストレスの原因が社内にあるのであれば、会社として対処しなくてはいけません。

労災で対応できる勤務中の怪我や事故に限らず、社員のメンタル不調への配慮は、すでに会社の社会的責任となっているのです

また、メンタル不調で長期休業者が出た場合、空いた穴を他の従業員が埋めなければなりません。そうなれば、その従業員への負担が大きくなり、健康状態の悪化に繋がるでしょう。連鎖式に社員が倒れてしまう会社は、決して「健康経営」とはいえません。

健康状態が悪くなりやすい中高年の従業員が多かったり、人材不足で長時間労働が常習化していたりする会社は要注意です。パフォーマンスが低下しやすいため、より一層、人の健康に注目して経営したいところです。

 

健康経営を導入する際の注意点

健康経営を始めることを公言しても、行動が伴わなければメリットを得られません。健康経営を導入する際には、次のようなことに注意しましょう。

企業全体で取り組む必要がある

健康経営は、特定の部署だけで行うのではなく、企業全体で取り組む必要があります。

部署は、一見独立しているように見えますが、さまざまなシーンで連携をとっています。そのため、特定の部署の労働時間が長く、他の部署の労働時間が短いようでは、必要なときにうまく連携できず、業務に支障をきたしてしまうのです。

また、部署ごとに従業員の満足度が異なると、他の部署への異動や転職を希望する従業員が出てくるでしょう。企業全体で健康経営に取り組むことで、従業員としても健康に対する高い意識を持てるようになり、早期に認定マークを取得できると考えられます。

企業のトップが健康経営に理解を示す必要がある

企業のトップが健康経営に理解を示さなければ、新たな施策を企画しても認められなかったり、健康経営に対する予算を削られたりする恐れがあります。

逆に、企業のトップが健康経営に理解を示し、率先して声を挙げることで、スムーズにさまざまな施策を導入できるでしょう。

現実的な施策を盛り込む

認定マークの取得を焦り、一気に施策を導入しても、十分に活用できず形骸化する恐れがあります。どれだけ立派な施策を導入しても、利用できなければ健康経営とは言えません。現実的で、全ての従業員が利用しやすい施策を導入しましょう。

実際に利用できているか、従業員からの評判は良いかなど定期的に調査して、少しずつ健康経営の確立に向けて進めていくことが大切です。まずは、月の残業時間を60時間から40時間に減らすなど、労働環境を見直しましょう。状況を整えてから、健康経営に繋がる福利厚生を導入することをおすすめします。

 

健康経営は、すべての会社に必要となる経営方針

日本の景気が落ち込み、ブラック企業という言葉が一般的になり、心身の健康を失ってまで働かされる人が増え…という悪循環に入り込んでしまっていた昨今。しかし、その負のスパイラルからの脱却を試みる会社が増えてきています。そうしないと、会社として「生き残れない」と察したからです。

もちろん、健康経営の導入には、時間もコストもかかります。そのため、現状維持でいい…と考える経営者も多くいるでしょう。しかし、少しでも早くこの課題に取り組む会社が増えることで、働きやすさの底上げが可能になり、「働く」が苦痛ではなくなる会社員が増えるはず。

もしあなたの会社が、「もっと社員の健康に気を配る必要がある」と少しでも感じているのなら、手遅れにならないうちに取り組んでみてはいかがでしょうか。会社に貢献し、事業を支えている社員が倒れてからでは、もう遅いのです。

 

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