令和2年4月1日から、新型コロナウィルスの特例として雇用調整助成金の拡充が行われました
新型コロナウイルスが猛威をふるう中、多くの企業が事業縮小を余儀なくされ、その結果、さまざまなパターンでの休業が生じています。会社は従業員を休業させるとき、休業手当を支払わなければいけませんが、その負担軽減のためにあるのが「雇用調整助成金」です。
「申請書類を書くのが大変、添付書類が多い、制限が厳しく対象企業とならない…」などの理由から、なかなか申請に至らないとう現実がありましたが、厚生労働省の対応により、4月1日から要件や申請書類などの内容が変更となっています。
対象となる期間は、令和2年4月1日~6月30日までです。
つまり、拡充後の雇用調整助成金では、この期間に休業した分が対象となります。令和2年1月24日~3月31日、7月1日~7月23日は今回の特例の対象外です。(7月以降は変更の可能性もあります)
※令和2年1月24日~3月31日、7月1日~7月23日の期間は、以前の特例が適用されます。
拡充後、大きくかわったポイント9つ
ポイント①
計画の事後申請が、「5月31日まで」から「6月30日まで」可能になりました。
ポイント②
令和2年4月1日~6月30日の間は、雇用保険に加入していない従業員も助成金の対象となりました。以前は、雇用保険に加入している従業員のみが対象であったため、大きな変更となります。
ただし、雇用保険に加入していない従業員の助成金は、別の助成金となります。
・雇用保険に加入している従業員:雇用調整助成金
・雇用保険に加入していない従業員:緊急雇用安定助成金
ポイント③
中小企業に対する助成率が、2/3から4/5に拡大されました。さらに解雇などがなければ助成率は9/10までアップします。大企業は、1/2から2/3への拡大(解雇などがなかったら3/4)にアップします。
ポイント④
教育訓練を実施したときの加算が、1人1日1,200→1人1日2,400円にアップしましたさらに、インターネットを使っての研修(マナー研修、ハラスメント研修など)も対象となりました。
ポイント⑤
生産性要件(売上や生産量などが前年同月に比べてどれぐらい減っているか)が、10%から5%に引き下げられました。
ポイント⑥
短時間休業が、全従業員の一斉休業でなくてもOKとなりました。店舗や勤務シフトのパターンごとなど、グループ単位での短時間休業が対象となったということです。
ポイント⑦
書式の記載項目が約半分になりました。添付書類が減り、申請しやすくなりました。
ポイント⑧
2回目以降の計画書の提出が必要なくなりました。初回の申請は必要です。2回目以降の計画書の提出が必要なくなったので手続きが手間が1つ減りました。
ポイント⑨
労働保険料の滞納があっても申請ができるようになりました。労働保険料の滞納があると不支給になっていました。緊急対応期間中は、労働保険料に滞納があっても不支給の要件になりません。
雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の違い
4月1日より、助成金が以下のように区分されました。
・雇用保険に加入している従業員:雇用調整助成金
・雇用保険に加入していない従業員:緊急雇用安定助成金
比較表はこちらです。
雇用調整助成金 | 緊急雇用安定助成金 | |
対象になる企業 | 企業が雇用保険に加入 | 企業が労災保険に加入 |
対象になる従業員 | 雇用保険加入者 | 雇用保険未加入者 |
助成率 | 4/5(大企業:2/3)
※以下の両方を満たすときは9/10(大企業:3/4)となります。 ①1月24日~休業日の締め日に解雇、雇止め、派遣社員の期間途中の契約解除がない |
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1日休業したら支給される額 | 昨年度の平均賃金額によって変わります。
前年度の雇用保険加入者の「総賃金額」÷「平均人数」÷「平均所定労働日数」×休業手当支払い率×助成率 ※上限8,330円 |
平均休業手当日額によって計算方法が変わります。
支払った休業手当の金額÷(対象者の休業した総時間÷1日の所定労働時間)=平均休業手当日額・・・① 【②が8,330円以下のとき】 【②が8,331円以上のとき】 ※上限8,330円 |
教育訓練の加算 | 1人1日2,400円(大企業:1,800円) | なし |
短時間休業 | 部門や店舗、勤務シフトのパターンごとなども対象 |
すでに雇用調整助成金を申請している会社が、追加として緊急雇用安定助成金を取得することも可能です。
【注意点】緊急雇用安定助成金は3月31日以前は対象となりません。あくまで別の助成金になるので、要件などをしっかり確認する必要があります。
内容が拡充され、申請ハードルが減った雇用調整助成金。これまでにない経済危機を乗り越え、会社と雇用を守るためにも、ぜひ活用をおすすめします。