2020年は、年初には考えもしなかった1年になりました。現在がアフターコロナなのか、ウィズコロナなのかもまだ明確ではありません。確かなのは、新型コロナウイルス流行が私たちの働き方を大きく変えてしまったということです。

新型コロナによって人と人の接触が制限されたため、これまで保守的だった会社も変化せざるを得ませんでした。その結果、働き方だけではなく、人の意識も大きく変わっていきました。

コロナで変わったワーキングシーン7つ

アフターコロナ

客先を訪問して間関係をつくるところから始まっていた営業も、パソコン上での営業がレギュラーになりつつあります。付随して、データを社内サーバからクラウドへと移行する会社が急増。自粛要請期間中は、書類管理や押印のためだけに出社するケースが非難され、ペーパーレス・印鑑レスも急激に進みましたセミナーや飲み会もWEB上での開催が当たり前となり、大きな社会変化がもたらされました。

上記の変化は、働く側にとってはおおむねポジティブなものが多いでしょう。しかし「会社運営」「労務管理」という側面から見るとトラブルの温床にもなり得ます。実際、すでに各所で労務トラブルの芽は生まれているといって過言ではありません。

アフターコロナの労務トラブル、4つの火種

アフターコロナのトラブル

ワーキングシーンの変化から生まれた労務トラブルの火種は、今は目に見えなくても、いずれ必ず炎上します。どれもコロナ流行がなければ火が着かなかったものばかりです。そして、先を見越してさっさと火消しを行っている会社も多くあります。

「そのうち何とかしよう」「そんなに大事ではないだろう」では、会社の存続にかかわるトラブルに発展しかねません。ひとつひとつ、スピーディーに対策を取る必要があるでしょう。

連載「アフターコロナの会社の守り方」第4弾は、社員の健康管理についてです。

体調不良の社員に出社してもらうかどうか

コロナの流行以前は、多少体調が悪くても出社するのが当たり前…という方が多かったと思います。

「熱が39度あれば休むけれど、37度5分は微熱だし、頑張って出社しよう」
「仕事が気になるから、とりあえず行こう」

という意識の方がほとんどだったのではないでしょうか。2020年2月の調査では、「体調が悪くても無理して出社したことがある」と答えた方は、83.1%にのぼります。

しかしコロナの流行以来、体調が悪く微熱がある社員は出社せずに休んでほしい、という会社が増えました。社員も体調不良で無理をすることは減りましたが、「有給も使い切ったし、休むと給料が減ってしまう。微熱があるし咳も出ているけど、まぁ行こう」という社員の行動を完全コントロールするのは至難の業です。

休業手当が発生する場合とは

出社しようとする社員を休ませる場合は、休業手当が発生する可能性があります。休業手当とは、「会社都合で社員を休ませるときには、平均賃金の6割を支給しなさい」という法律で定められた手当金です。

体調不良の社員が、新型コロナに感染した、医者に止められたなど、明らかに仕事ができる状態ではないときは休業手当は発生しません。しかし、明確な診断が下っておらず、会社が大事をとって休ませる場合は会社都合となり、休業手当を支給しなくてはなりません。 

社員に出社してほしくない状況は、本人の体調不良以外に、
・本人の体調は悪くないが、家族に新型コロナにかかっている人がいる
・本人の子どもの
保育園でクラスターが発生している
・クラスターが発生した場所に該当の日時に行っていた
など、いろいろなパターンがあります。 

上記のようなケースで会社が社員を無理矢理休ませて、休業手当を払わなければ、トラブルになることが多いため注意が必要です。

休業手当の支払い基準

トラブルを避けるためにも、まずは会社の方針をはっきり決めましょう。

・休ませるときのルールを決める
少しでも体調が悪い社員がいる場合は、必ず休ませるというルールを明確化します。人事部や相談された上司が迷うことがないように、「どのようなケースでは休ませるのか」「会社としてどのような対応をするか」を決めます。

・休業手当の基準をつくる
会社が出社を拒否したとき、休業手当を払わなくてはならない場合と、払わなくもいいケースに分かれます。そのときは、客観的に見て「出社ができる状態なのかどうか」がひとつの基準となります。

たとえば38度の熱が3日間続いてる状態は、誰が見ても出社できる状態ではありません。こういう場合は、休業手当は発生しません。微妙なケースの基準を明確にしておき、誰が判断しても同じ対応ができるようにルール化しておきましょう。

新型コロナの助成金を活用する

高リスクの社員を出社させることは控えたい…という会社も多いでしょう。そのときは新型コロナの助成金を活用してください。

ここでは、妊娠中の女性が有給休暇を取れる助成金をご紹介します。

  • 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金
  1. 会社で、妊娠した女性のために休暇の制度をつくります。
  2. 有給にして、妊娠した女性が休んだときには、年次の有給休暇の6割以上の休業手当を支払います。
    (5日以上休暇を取得したときに助成される助成金です)

参考|厚生労働省サイト

助成金の対象になる場合は、休暇制度をつくるなどの手続きを踏み、休暇を取得してもらいます。会社は助成金を受給し、社員に休んでもらうことができます。 

まとめ

健康に関する問題には、プライベートな要因が絡んできます。理由を聞きにくく、聞かれた社員も過敏になるケースもあるでしょう。しかし多くの社員を新型コロナの感染から守るという視点から、体調の悪い社員に休暇を要請するのはやむを得ない対応といえます。

何となく具合が悪い…家族に新型コロナの感染者がいる…など、本人が働ける状態であっても休んでほしいときには、休業手当を支払う必要があることを理解し、正しい対応を行うようにしてください。

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