新型コロナの影響で、休業手当を支払い、従業員に休んでもらう企業が多くなっています。しかし休業手当は支払って終わりではありません。労務管理上、さまざまな手続きに影響を与えます。休業手当の支払い時によくある疑問は、以下の5つです。
- 休業手当は課税?
- 休業手当に労働保険料(雇用保険、労災保険)はかかる?
- 社会保険料の変更は必要?
- 退職したときの離職票
- 休業手当の期間があったときの、平均賃金の計算は?
ひとつずつ、解説していきましょう。
1.休業手当は課税?
休業手当は、税金がかかる手当です。「賃金」と同じ扱いなので、税金がかかります。
2.休業手当に労働保険料(雇用保険、労災保険)はかかる?
休業手当は「賃金」と同じ扱いなので、労働保険料はかかります。
・雇用保険料は、休業手当を支給するときに保険料を給与から控除してください。
・労災保険料は、毎年の7月10日までに計算して納付する年度更新の計算のときに、休業手当を含めて保険料を計算してください。
3.社会保険料の変更は必要?
社会保険料の変更には、大きく2種類あります。
①固定的賃金(基本給、交通費、役職手当など)に変更があったときの「随時改定」(以下、随時改定)
②毎年4、5、6月の賃金の平均を計算して社会保険料を見直す「定時決定」(以下、定時決定)
それぞれ休業日があり、休業手当が支払われているときの注意点を確認していきます。
①随時改定
休業手当の支払いにあたり、随時改定の対象になることがあります。それは、賃金の算定期間内に1日でも休業手当を支払う日があり、休業が3か月を超えても解消されないときです。現状の社会保険料から、保険料の等級が2等級以上の変更があれば、随時改定の手続きができます。
会社の休業解消時にも、同じように、随時改定が必要になるケースがあります。「会社の休業解消時」とは、休業手当の支払いがない月が3か月続いたときを指します。
②定時決定
4、5、6月に支給する給与に休業手当が含まれているときは、休業手当を含めて社会保険料を計算します。休業手当を支払った日は出勤日扱いです。ただし、7、8、9月のいずれかに随時改定が該当し、社会保険料を変更するときは、随時改定が優先されます。
4.退職したときの離職票
休業日があり、休業手当の支給がある期間を離職票に記載するときは、離職票の備考欄に「休業日数」と「休業手当額」の記載が必要です。
記載がないと、ハローワークは、どうして給与が下がっているがわからず、低い給与のまま失業保険の給付額を決めてしまうため、失業保険の金額を正しく計算してもらえなくなります。雇用調整助成金を受けたときは、支給決定された日の記載も必要です。
5.休業手当の期間があったときの、平均賃金の計算は?
会社の都合で休業したときは、社員に労働基準法で決められている平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければいけません。
平均賃金は、直近の3か月の賃金で計算します。ただし、休業があったときは、休業日数・休業手当は計算に含みません。
また休業の期間が1日、2日でなく1週間や1か月など長く続くときは、休業期間の開始日から終了日までの間にある会社の休日(就業規則などで定められている日)も含めて「休業日」となります。休業日があるときは、平均賃金の計算が煩雑になりますので、注意しましょう。
まとめ
新型コロナウイルスの流行により、いやおうなしに労務管理に向き合わざるを得ない会社が増えています。助成金申請、リモートワークの導入による在宅勤務規程の作成、勤怠管理や評価制度の見直し…。コロナ禍は社会に大きなインパクトを与える出来事ですが、会社の基礎を見直す機会であるともいえます。労務管理を見直すことは、働き方を見直すことに直結しているからです。