「都合が悪ければ答えなくていいですよ」はNG! うつ病や既往歴を採用時に聞くことの必要性とリスク

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企業側が「健康で、バリバリ働いてくれる社員を採用したい!」と考えるのは当然のこと。しかし人間は機械ではありませんから、個々それぞれに健康上の事情を持っているのも、当然です。

そこで今回は、面接時にモヤモヤする前に知っておきたい、「採用と既往歴」について。
健康情報はとてもセンシティブなものですから、興味本位で聞いてはいけません。

 

採用時に聞いてはいけない情報一覧

採用面接では、勤務に当たって必要な情報を質問しますが、その答えによって採用の可否をする前提で、情報を聞き出すことはできません。

まず、採用時に聞いてはいけない情報をまとめてみます。

出身地 / 家族構成 / 生活環境 / 宗教 / 購買雑誌 / 尊敬する人 / 合理性と客観性を欠く健康診断情報

上記のように、本人の自由である項目や、聞く必要がないと考えられる健康情報については、採用時に聞くことができません。

では会社側は、本人の健康状態を把握できないまま、採用を進めなくてはいけないのでしょうか。そうではありません。雇用時には健康診断が義務付けられていますから、その結果を会社が知ることは可能です。

注意したいのは、健康情報を取得するために、法律で義務付けられていない健康診断を受けさせて、情報を取得するのはNG、ということ。これは就職差別を防ぐための措置であり、だからこそ「合理性と客観性を欠く健康診断を受けさせてはいけない」と定められているのです。

 

家族、本人の既往歴はなぜ聞けないのか?

それでは、既往歴を聞けない理由はどうしてでしょうか。

本人の既往歴は、個人情報保護法における要配慮個人情報にあたるため、原則聞くことができません。また家族の既往歴も、それは本人が働けるかどうかの判断には不要な情報のため、聞いてはいけないのです。

企業側はリスクを考え、「遺伝性のある病気の有無を知りたい、労働者が同じような病気を発症する可能性があるなら、採用を見送りたい」と考えるかも知れませんが、将来の病気に関しては、誰しも推測の域を出ることはできません。また余計な推測が横行すれば、公正な採用が行われなくなります。

家族の健康情報の取得は、情報管理の観点からも、企業にとってリスクとなるでしょう。そして本人が家族の既往歴を聞かれた結果、不採用になると、たとえ既往歴が関係していないとしても不安や疑心暗鬼が芽生えます。

既往歴は、本人・家族のどちらの場合においても、業務遂行能力や適性の判断には結び付きません。お互いのためにも、知りたがらない、聞かないのがベストです。

 

業務上必要な既往歴を聞くことはできない?

既往歴を聞かないと合否判断ができない、というケースもあります。そのときは、必要な部分のみ聞くことができます。ただし既往歴を聞く必要性について本人に説明し、同意を得なければなりません。

たとえば清掃業では、ゴミの存在を形だけではなく色で識別するため、色盲かどうかの確認が必要です。色盲の場合、汚れを判別できず、本人はきれいに清掃したつもりでも、実際には汚れが残ってしまう可能性があります。そうなれば、「労働力を会社に提供し、会社が労働の対価となる給与を支払う」という基本的な契約条件を満たせなくなるでしょう。

このように合理的かつ客観性のある理由が説明でき、なおかつ本人の同意があれば、既往歴を聞くことができます。

正当な理由で既往歴を聞くのであれば、取得した情報は要配慮個人情報にあたるため、取り扱いに注意しましょう。また既往歴を聞いた結果、本人が回答しなかったからといって、健康情報を外部に漏えいしたり、それを理由に不採用にしたりしてはいけません。

 

うつ病の既往歴を聞いてもいいの?

よくあるのが、うつ病など精神疾患の既往歴を聞くケースです。

うつ病や精神疾患は、必ずしも業務ができなくなる病気とはいえないため、不適切な質問とみなされる可能性が高いでしょう。また、薬の服用についても同様です。ハッキリと病名を聞かなくても、服薬について聞けば、現在かかっている病気や既往歴が推測できてしまうため、聞いてはいけません。

たとえ「都合が悪ければ答えなくてもいいですよ」などと前置きしても、そもそも不要な質問はしない方がいいでしょう。本人としては、質問をされた時点で「正しく回答しなければ不採用になる」と感じるのは当然です。そうなれば強制的に回答を求めていることになりますから、採用担当者があとあと「そんなつもりはなかった」といったとしても、それは通りません。

そして、本人は質問以外に答える必要はないため、自発的に既往歴をいわなかったからといって、不当な扱いをしてはいけないのです。

 

既往歴が虚偽だった場合は解雇できるのか

既往歴が虚偽だった場合、解雇できるかどうかは、既往歴と業務内容の関係性によって異なります。業務の遂行に著しい障害があると判断される場合は、懲戒解雇の事由に当てはまると考えられます。しかし、業務の遂行に対する影響が軽微であったり、全く影響がなかったりする場合は、解雇は無効となる可能性が高いといえます。

業務に重大な影響を及ぼす病気としては、てんかんのような意識に問題が生じる病気があげられます。たとえば車の運転を行う場合において、てんかんの発作が起こると、大きな交通事故に繋がる恐れがあります。そうなれば、会社の評判も大きく落とすことになるため、正当な解雇理由と判断されるでしょう。

既往歴が虚偽だったと判明するパターンには、以下のようなものがあります。

他の従業員からの密告 / 本人からの申告 / 既往歴が原因で業務において重大な事故が発生する / 家族と話す機会があったときに偶然耳にする

 いずれのパターンでも、業務に重大な支障をきたす恐れがある場合には、懲戒解雇が認められる可能性が高いでしょう。

 

トラブルを防ぐために

会社には、安全配慮義務が課せられているため、業務に重大な支障をきたす既往歴の確認は認められていることが分かりました。

ただし、既往歴を聞く前に「本当に聞く必要はあるのか?」と十分に考える必要があります。業務内容と照らし合わせ、本人には採用に関して既往歴を聞く必要があると、明確に伝えましょう。そのときは「これまでにかかった病気を答えてください」ではなく、「○○の病気にかかったことはありますか?」などピンポイントで尋ねることが大切です。

最後に、注意点をあげておきましょう。

・どのようなケースでも、本人の同意がなければ、聞くことはできない
・取得した情報は個人情報保護法における要配慮個人情報にあたるため、採用以外において取り扱うことはでない
・退職時に、転職先の会社に「この人物は○○の既往歴があるためおすすめしない」などと伝えることは禁じられている

個人情報の取り扱いである以前に、その人のプライベートに踏み入る権利は、だれも持ちません。

後日のトラブルを防ぐために、既往歴の取得・管理には、くれぐれも注意してください。

 

 

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