2022年より、社会保険に加入する対象者が、企業の従業員数※によって段階的に拡大されます。それにより、これまで扶養の範囲内(年収130万円未満)で働いていたパート・アルバイトも社会保険に加入しなければならないケースがでてきます。

企業の社会保険料の負担も増えるため、「まだ先だから」ではなく、今から準備が必要です。

※「従業員数」とは現在の社会保険の加入対象者の人数です。

対象となる企業と時期

加入対象者の適用範囲の拡大は、実は従業員数500人超(501人以上)規模の企業では2016年に実施済です。その後、2020年5月29日に年金制度改正法が成立したことにより、パート・アルバイトでも要件を満たす従業員は社会保険の被保険者となるよう定められ、適用範囲が拡大されることとなりました。

【2022年に開始される企業と時期】

従業員数101人以上:2022年10月1日から
従業員数51人以上:2024年10月1日から

現在、社会保険に加入していなければならない従業員をおさらい

社会保険の加入者は法令で定まっています。2021年現在、フルタイムの従業員(正社員など)と、フルタイムの従業員と比べて週の所定労働時間※および1か月の所定労働日数※が3/4以上のパート・アルバイトなどは社会保険への加入が必須となっています。

※「所定労働時間」:雇用契約で企業と従業員の間で決めている労働時間
※「所定労働日数」:雇用契約で企業と従業員の間で決めている勤務日数

上記の従業員に加え、2022年より新たに加入者対象者が拡大される、ということです。

今後、社会保険に加入しなければならないパート・アルバイト

2022年以降、パート・アルバイト全員が社会保険に加入になるわけではありません。対象になるのは以下のすべてを満たす方です。

1 週の所定労働時間が20時間以上
2 継続して2か月を超えて雇用の見込みがある
3 月の賃金が88,000円以上
4 学生ではない(休学中または夜学生は除く)

1と2の目安は、雇用保険に加入しているパート・アルバイトです。(雇用保険の加入要件は「週の所定労働時間が20時間以上であること」と「31日以上の雇用が見込まれること」です)

3は、以下の賃金は除きます。

・臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
・残業や深夜労働、休日出勤に対して支払われる賃金(割増賃金など)
・最低賃金の計算に含まれない賃金(精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)

4は、卒業後も勤務することが決まっている卒業予定者は、加入対象となります。

つまり、雇用保険に加入し、月88,000円以上の給与をもらっているパート・アルバイトは対象者となり、対象時期から社会保険に加入する必要があるとお考えいただいてよいかと思います。

パート・アルバイトに社会保険を適用する理由

今回、社会保険の加入条件が拡大されるのは、パート・アルバイトの将来の所得保障や働きやすさの実現を目指してのことです。また勤務する企業規模によって社会保険に加入できる要件が変わるのは不合理なため、段階的に企業規模の範囲を拡大することとなりました。

社会保険に加入したときには、以下のような保障が受けられます。

傷病手当金:私傷病で休業したときに支給される
出産手当金:産前産後休業を取得したときに支給される
老齢年金:将来、年金を受給するときに厚生年金が上乗せされる
障害年金:病気やけがで障害等級3級以上であれば、厚生年金が支給される(国民年金は2級以上から支給)
遺族年金:本人が亡くなったとき、残された遺族に厚生年金が上乗せされる(要件あり)

このように、パート・アルバイトであっても、フルタイムの従業員と同じような手当金や年金のメリットが生まれます。多様な働き方を受け入れ、女性や高齢者の働きやすさを後押しする施策として注目を浴びています。

企業の従業員数の確認の単位

対象企業になるかどうかは、従業員数で決まります。以下を参考に、正しく数えるようにしましょう。

NGのカウント方法
正規従業員とパート・アルバイトなど、その企業が常時使用するすべての労働者をカウント
OKのカウント方法
社会保険の被保険者数をカウント。社会保険の適用対象にならない短時間労働者は人数に入れない

他にも注意点はあります。まず、法人のときは法人番号ごとに、個人事業は事業所ごとに確認が必要です。また毎月の従業員の人数が変動するときは、「直近12か月のうち6か月で基準を上回った段階」で適用対象となることを覚えておきましょう。これは、適用対象となった月以降に従業員数が適用従業員規模を下回ったとしても、原則適用されるということです。

従業員に何を説明するべきか

自社が適用企業だと確認したら、まずはパート・アルバイトで対象になる方を確認しましょう。対象者には、今後、社会保険に加入しなければならないことを早めに説明する必要があります。

社会保険への加入に当たっては、従業員から「手取りが減るのではないか」という心配の声が出るかもしれません。しかし基本的には、社会保険への加入はメリットは大きいものです。再度記載しますが、以下のような社会保障を受けることができるようになります。

社会保険加入で受けられる主な保障

傷病手当金:私傷病で休業したときに支給される
出産手当金:産前産後休業を取得したときに支給される
老齢年金:将来、年金を受給するときに厚生年金が上乗せされる
障害年金:病気やけがで障害等級3級以上であれば、厚生年金が支給される(国民年金は2級以上から支給)
遺族年金:本人が亡くなったとき、残された遺族に厚生年金が上乗せされる(要件あり)

上記に加え、扶養範囲の上限を超えて働くことが可能であれば、収入も増えていきます。

また配偶者の扶養に入っているなどの場合、社会保険上の扶養は年収130万円未満とされています。 しかし今回の改正で、配偶者の会社が適用拡大に該当する企業ならば、配偶者の月額が88,000円未満の場合には扶養に入ることができます。

企業の担当者は、従業員に上記を正しく伝え、社会保険料の納付以上にメリットも生まれることを説明しましょう。そのうえで、今後の働き方や勤務時間などの労働条件について話合いを進めることをおすすめします。

社会保険の加入の拡大に伴い、企業の社会保険料も増えます。どのくらい増えるかなどを早い段階で確認し、採用計画などの見直しが必要であれば検討してみましょう。

 

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