子の看護休暇とは、小学校就学前の子どもがいる従業員が、子どもの健康診断・予防接種を受ける日や、病気やケガで看護が必要になったときに、取得できる休暇です。

この制度が、2021年1月1日より改正されます。具体的な変更点は、「取得できる従業員の範囲の拡大」と「1時間単位での取得が可能になる」の2点です。従業員にとっては利便性が高まりますが、企業は事前に管理簿を作成するなどの準備が必要になります。「まだ先」と思わずに、早めの準備をおすすめします。

まずは現状の「子の看護休暇」をおさらい

子の看護休暇は「育児・介護休業法」で定められた休暇です。従業員が申請をしたのに、会社が取得させなかったときは、法律違反になります。

対象者:小学校就学前の子どもがいる従業員
1年間で取得できる日数:子どもが1人のときは5日、2人以上のときは10日。
取得単位:1日もしくは半日単位(※
半日単位の取得は、勤務が4時間以下の従業員は除外)

2020年現在の制度については、以下記事に詳しくまとめています。
参考記事|子の看護休暇、男性も取れる?どうやって運用する?

 

子の看護休暇はどう使われているか

子の看護休暇は、現状以下のような場面で取得でき、多くの企業で利用されています。

【あらかじめ日程が決まっているとき】
健康診断や予防接種など。1日取得するか、半日で足りるかをあらかじめ想定して申請し、取得します。
【急なケガや病気のとき】
朝起きたら熱が出ていた、保育園や幼稚園からケガをしたと連絡があった…など、急に看護しなくてはいけなくなったときも、取得可能です。

子の看護休暇は、以前は1日単位でしか取れませんでした。しかし2017年に半日取得が認められ、子どもが病気やケガをしたときの短時間の病院の付き添いにも利用できるようになりました。この制度2021年1月1日に、再度改正されるということです。

2021年1月1日の改正後は、どう変わる?

大きな改正点は、2点です。

①対象者の範囲が広がります
これまで半日単位の対象外だった、「勤務時間が4時間以下の従業員」も、全単位で取得できるようになります。
②取得できる時間単位が変わります
これまで1日単位 / 半日単位で取得可能でしたが、半日単位が「1時間単位」に変更されます。

改正前改正後
対象者小学校就学前の子どもがいる従業員(勤務時間が4時間以下の従業員は、半日取得はできない)小学校就学前の子どもがいる、すべての従業員
取得できる時間単位1日、もしくは半日単位1日、もしくは1時間単位

時間単位について、注意したいことがあります。

これまでは、法的に「1日もしくは半日単位」とされていました。しかし「半日」の基準は企業や従業員のシフトによって変わります。改正で「1時間単位」が加わることにより、法的には「半日」は削除されます。ただし、企業によっては「1日 / 半日 / 1時間単位」で設定したいときもあるはずです。半日単位を存続させたいときは、企業単位で就業規則に記載する必要があります。

従業員にはメリットが増えます

1時間単位での取得は、短時間で済む通院などで便利です。子の看護休暇は1年間で取得できる日数に上限がありますから、こまめに効率よく取得できることは従業員にとって大きなメリットになるでしょう。

勤務時間が4時間以下だった従業員は、これまで休暇取得はできていませんでしたが、改正後はその従業員も「病院が長引いた」などの理由で1時間単位で取得できるようになります。早退も同様です。「急に子どもが熱を出し、看病が必要になった」というときは、1時間単位で早退できるようになります。

子の看護休暇

企業は管理が煩雑になるため、注意が必要です

1時間単位で取得できるようになると、企業側の管理は煩雑になります。

・従業員によって勤務時間が異なるため、取得できる時間数も変わり、管理がややこしくなる
・対象の従業員が増える
・就業規則の変更が必要になる

企業サイドから見ると、手間は増えるでしょう。しかし2021年からは、法律に沿った運用が求められます。そのため今必要なのは「管理簿の作成」です。どの従業員が、何時間取得できるのかを一覧表にしておけば、その都度調べて対応する手間が省けます。

また企業としてのルールを明確にし、従業員に周知する必要もあります。たとえば子どもの病気の付き添いが必要だからと、長期間にわたって毎日1時間ずつ取得されることがあれば、業務に支障が出るかもしれません。もちろん取得理由が該当していれば、毎日1時間の取得も可能ですが、どのように申請しどのように活用できるのかを法律の範囲内で決め、従業員と認識合わせをする必要があるのです。

申請ルールはどう決める?

社内ルールの基本は、事前申請がよいでしょう。ただし法律上、当日の申請も企業は認める必要があります。それは子どもの病気やケガは急に起きるからです。極端な例ですが、9:00出社の職場で、8:59に子の看護休暇を使いたいと電話があっても、企業側は断ってはいけません。

法律上、書面で申請する必要はありませんが、「当日取得の場合は、〇日後までに申請書を事後提出する」「休暇の理由を裏付けるものを提出する」などの申請における社内ルールを決めることは可能です。

一般的には「保育所の連絡帳のコピー」「予防接種の検診の予約表」「病院の領収書」などの提出が行われています。ただし、「労働者に過重な負担を求めることにならないよう配慮するものとする」という運用上のガイドラインが、厚生労働省から出ています。診断書などは、医療機関の受診と料金が必要になるため、理由の確認は医師の証明書以外も対象にしておくことをおすすめします。

ちなみに、子の看護休暇は有給休暇とは違うため、賃金を支払う必要はありません。もちろん支払っても構いません。企業によって対応が異なるため、給与の支払いがあるかどうかは、しっかりと決めて就業規則に記載し、事後のトラブルを防ぎましょう。

就業規則の変更について

子の看護休暇についての記載は、現在お持ちの就業規則の本則、もしくは別冊の「育児介護休業規程」にあると思われます。現状の就業規則で、1時間単位での取得がない企業は、この部分の記載変更が必要です。ただし記載方法はその企業の就業規則によって多少異なり、ややこしいため、社会保険労務士などの労務のプロのアドバイスを受けることをおすすめします。

HRbaseで作成する就業規則での、「子の看護休暇に関する法改正」への対応は、2020年12月に行う予定です。就業規則の新規もしくは再作成をお考えの方は、HRbaseのご利用もぜひご検討ください。

また就業規則を変更したら、労働基準監督署への就業規則の提出と、従業員への周知が必要です。その流れについては以下の記事に詳しくまとめています。

参考記事|就業規則「作成・周知・届出:の全ステップ徹底解説

就業規則は、10名以上の従業員がいる企業は、作成と労働基準監督署への届出が必要です。これは労働基準法で定められています。近年では10名以下であっても、作成する企業は増えています。人数の過多にかかわらず、社内でルールを決めておくことはとても大切だからです。

2020年のうちにやっておきたい、就業規則の変更と管理簿作成

2020年に続き、2021年も労務を取り巻く課題は山積みでしょう。人材確保と働き方の多様性に関する施策は、今まで以上に重要視されるはずです。

「子の看護休暇」などの育児支援の制度を積極活用し、トラブルを防止し適切に運用できるよう、社内ルールの整備を行いましょう。労働時間管理ともに、今後の休暇管理についてもこの機会に整備することをおすすめします。

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