2021年6月11日、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が公布されました。この法律には、労働者とその家族の生活の安定や福祉の向上を目的とした健康保険法や、高齢者の医療の確保に関する法律などの改正が定められています。

参考|全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要

今回は、その中でも、協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入する企業に関係する、健康保険制度の改正を3つご案内します。3つとも、2022年1月以降に対応が必要になる改正です。

改正その① 傷病手当金(2022年1月1日施行)

2021年1月、傷病手当金について、不支給期間を除く1年6か月分が支給されることになります。

【改正の背景】
がん治療のため入退院を繰り返すなど、長期にわたる療養のために休暇をとりながら働く従業員が増えています。治療を理由に離職せざる負えないケースもある中、治療と仕事の両立を目指し、柔軟な生活保障を行うことが可能となるよう、傷病手当金制度が見直しとなります。

【傷病手当金の支給要件】
傷病手当金は、業務外の理由による病気やケガで仕事を休んだ日について、企業から給与の全額または一部が支払われないときに、協会けんぽから生活保障として支給されます。

傷病手当金が支給される要件は次のいずれも満たすときです。

①業務外の病気やケガの療養のため4日以上休んでいる
②働くことができない(傷病手当申請書に医師の証明が必要)
③休んだ期間について給与の全額または一部が支払われない

今回の改正で、治療期間中の欠勤について通算1年6か月分の傷病手当金の支給を受けることができるので、安心して治療を受けることができるようになります。

【改正内容まとめ】
改正前:
傷病手当金について、支給開始から1年6か月を経過するまで支給される

改正後:
長期にわたる治療期間の間に欠勤と出勤を繰り返すとき、出勤(年次有給休暇含む)による傷病手当金の不支給期間を除いた欠勤の治療期間のみを通算して1年6か月分まで支給される

改正詳細は以下リーフレットで確認ください。
参考|厚生労働省『令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます』

【対象者】
傷病手当金を申請する人で、2022年1月1日の前日において、改正前の要件である支給開始から1年6か月を経過していない傷病手当金の残りの支給期間について、改正後の要件が適用されます。

【施行日】
2022年1月1日

【企業に求められる対応】
・就業規則の見直し(休職期間の通算 など)
・傷病による休職者への傷病手当金の支給期間についての制度の説明
・休職者発生時のフローや説明書類の見直し
・長期治療期間を必要とする休職者の治療スケジュールと業務のすり合わせ
・仕事と治療の両立支援プランの作成や医療機関との連携のための書類準備
・仕事と治療についての研修(人事、上司など) など

改正その② 任意継続被保険者制度(2022年1月1日施行)

 【改正の背景】
任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が退職した後も、届出することにより引き続き最⼤2年間、 退職(喪失)前に加⼊していた健康保険の被保険者となることができる制度です。

任意継続被保険者の喪失理由は法令で定められており、今まで結婚して配偶者の扶養になったときなどは資格を喪失できませんでした。しかし改正後は、本人の希望により扶養になった時点で資格を喪失することも可能となります。

【改正内容まとめ】
改正前:
改正前の任意継続被保険者の資格喪失事由は以下の通りです。
・任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき
・死亡したとき
・保険料を納付期限までに納付しなかったとき
・新たに企業などに勤務することにより被用者保険、船員保険に加入することになったり、後期高齢者医療の被保険者となったとき

改正後:
改正前の要件に任意継続被保険者の希望により、申出が受理された日(保険者に到着した日)の属する月の翌月1日に資格喪失することができるが追加されます。また、原則、申出後の取り消しはできません。

【対象者】
2022年1月1日以降、任意継続被保険者制度を利用している人

【施行日】
2022年1月1日

【企業に求められる対応】
・健康保険を喪失する従業員への退職後の健康保険案内の見直し など

改正その③ 育児休業中の保険料と賞与保険料(2022年10月1日施行)

協会けんぽに加入している人が育児休業を取得するときは、休業している期間について届出することにより、育児休業している月の社会保険料と賞与を支給したときの社会保険料が企業負担・本人負担ともに免除されます。

現在、育児休業中の社会保険料免除については、月末時点で育児休業を取得しているときに、当月の保険料が免除される仕組みとなっています。

【改正の背景】
短期間の育児休業取得について、賞与月の月末時点で育児休業の取得が多いなどの指摘もあり、月末をまたぐか否かで保険料が免除されるかどうかが決まるという不公平が発生していました。

また、育児・介護休業法の改正により、今後、男性の育児休業は最大4回に分割して取得することが可能になります。社会保険料の免除だけを目的とした恣意的な育児休業取得ではなく、男性の育児休業など短期間の育児休業制度を柔軟に活用できることを支援するための見直しです。

【改正内容(育児休業している月の社会保険料)】

改正前:
月末時点で育児休業を取得しているときに当月の保険料が免除される

改正後:
改正前の要件に加え、社会保険料の対象となるひと月の中で2週間(14日)以上育児休業を取得しているときも保険料の免除対象とする

【改正内容(賞与を支給したときの社会保険料)】

改正前:
月末時点で育児休業を取得しているときに賞与を支給したときの社会保険料が免除される

改正後:
1か月を超える育児休業を取得しているときに限り、賞与を支給したときの社会保険料が免除対象となる

同月内に2週間の育児休業があればその月の社会保険料は免除されます。ただし、2週間の育児休業をした月に支給される賞与については、1か月を超える育児休業を取得しているときに限り社会保険料が免除されることが要件となるため、賞与の社会保険料は免除対象になりません。

(引用)厚生労働省『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の 一部を改正する法律の概要』P8

【対象者】
育児休業を取得する人で、2022年10月1日以降に休業を開始する人より適用されます。

【施行日】
2022年10月1日

【企業に求められる対応】
・育児休業取得者の社会保険料の免除制度についての周知
・育児休業取扱通知書への改正内容の追記
・企業の育児休業対象者の管理表の見直し
・給与計算担当者との育児休業対象者の情報共有
・給与計算と賞与計算時の社会保険料の免除漏れと免除誤りの防止対策の検討 など

 法改正に合わせて、働きやすい環境構築を

団塊世代が75歳以上の高齢者となり始める2022年以降、高齢者だけではなく、子どもたちや子育て世代、現役世代まで広く安心できる社会保障全般の見直しが必要であるとし、全世代型社会保障検討会議で話し合いが行われてきました。

社会保障制度の改正により、全世代への働くことへの支援が進む一方、企業や労務担当者は対象となる従業員へ適切に情報提供を行うことが必要とされます。この機会に相談窓口の設置などを行い、適切な対応や育児や健康について相談しやすい環境をつくることをおすすめします。

また、改正に伴い各種届出様式の変更が想定されるため、2022年以降施行される制度については届出様式の確認作業が発生します。労務担当者は注意が必要です。

 

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