人生100年時代。定年を迎えても、まだまだ働きたい / 働ける従業員が多くなるはずです。シニア活用に力を入れる企業も増えてきました。その反面、定年後も働く従業員を「いつまで雇用するのか」、また健康や体力面での不安に対してどう対処するかという課題も出てきます。

今回は、定年後に嘱託社員となった従業員の「無期雇用転換」について解説します。

無期雇用転換についておさらい

まず最初に、無期雇用転換についておさらいしましょう。

雇用には有期と無期があります。

「有期雇用契約」・・・期間を決めて雇用される契約社員やパート嘱託社員など
「無期雇用契約」・・・雇用契約の期間が決まっていないパートやアルバイト、正社員

有期雇用の場合、本人の意思や状況にかかわらず、契約期間が来れば雇用関係は終了します。しかし有期雇用契約で働く従業員は、「無期雇用転換」という制度を利用することができます。これは同じ企業で「1回以上の契約更新」と「通算5年を超えて雇用」の両方に該当したとき、無期雇用契約への転換申込みが可能になるという制度です。

企業が独自に年齢制限をしたり、無期雇用転換の対象者の条件を決めることはできません。また、有期雇用の従業員から無期雇用契約への転換の申込みが来たら、拒むことはできません。

定年を迎えた嘱託社員(有期契約)に対する、無期雇用転換の特例

この制度には年齢制限がなく、条件に合致するすべての従業員が該当します。しかし、定年を迎えた嘱託社員(有期契約)に関しては特例があります。

本来は、定年を迎えた嘱託社員であっても、無期雇用転換の申込みを受けた企業は断ることはできません。しかし、あらかじめ労働局の認定を受けておけば、定年を迎えた嘱託社員(有期契約)からの無期雇用転換の申込みを拒むことができるという特例です。

この無期雇用転換の特例は、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法施行規則」で定められています。

特例が設けられた理由

前提として、シニア層の知識や経験は大いに活用すべきです。意欲のある従業員が定年後も企業にとどまり、何らかの形で勤務を行うケースも増えてきました。

一度退職した従業員は、嘱託職員などの有期雇用となることが多いはずです。しかし無期雇用転換の制度が利用されると、その従業員はもう一度無期雇用となり、自主的に辞めない限り80歳、90歳になっても雇用を続けなくてはいけなくなります。

高齢者は体力面や健康面などに個人差があり、必ず同条件で働き続けられるとは限りません。途中で契約の見直しが必要なケースも出てくるはずです。

とはいえ、企業から退職を勧奨してしまえば「解雇」となり、トラブルの種にもなりかねません。そのため企業主体でケースバイケースに対応するため、無期雇用に応じなくてもよい制度として、この特例が設けられました。

特例の届出は早めに行う

定年後の従業員から無期雇用転換の申込みをされた後に特例の届出をしても、申込みは拒めません。

そのため「定年後であれば無期雇用転換を行わない」と決めたときは、早めに特例の届出をされることをおすすめします。

認定をもらう流れ
① 「第二種計画認定・変更届」を作成する
② 高年齢者が働きやすくなるための対策を決める
③ 管轄の労働局へ届出をする
④ 管轄の労働局より認定書をもらう

手続の詳細については、以下の記事にまとまっています。
また、顧問社労士がいればアドバイスをもらってみてください。

参考記事|定年後の無期雇用転換の特例 対策の検討と、届出までの流れ

認定を受けた後は、雇用契約書と就業規則の変更が必要

無事認定を受けたあとは、雇用契約書と就業規則への記載が必要です。

まずは「無期雇用転換申込権が発生しない期間」が追記された雇用契約書を作成し、対象となる従業員と雇用契約を結び直します。

参考・ダウンロード |厚生労働省サイト 労働条件通知書

 

※「契約期間」の「有期雇用特例措置法による特例の対象者の場合」の
「無期雇用転換申込権が発生しない期間」「Ⅱ(定年後の高齢者)」の記載が必要です。

就業規則にも、定年後、嘱託社員(有期雇用)は無期雇用転換の申込みの対象外であることを記載し、労働基準監督署へ届出をします(従業員10名未満のときは届出は必要ありません)。

特例の届出時に気を付けること

よく見かける間違いとして、定年年齢を超えて新しく採用した従業員も対象者として扱っているケースがあります。対象となるのは、あくまでも自社で定年を迎えた従業員です。

自社の定年年齢を超えて新しく雇用した従業員は対象にならないため、無期雇用転換の申込みが可能で、企業側は断ることはできません。

【例】
企業の定年年齢:60歳
企業の再雇用年齢:65歳 の場合

特例対象になるケース:55歳で入社し、定年後も嘱託社員として勤務している従業員
特例対象にならないケース:61歳で雇用された従業員

また、特例の認定がされたとしても、有能な従業員であれば無期転換権の行使を気にせずに契約更新をすることは可能です。ただし雇止めなどの他の問題が発生するかもしれません。契約更新時には、次回の更新について双方が納得できる条件を決めることが重要です。

シニア活用を推進する企業こそ、特例の届出を

定年を迎えた嘱託社員に対する無期雇用転換の特例の届出を済ませていない企業は、まだまだ多くみられます。「うちは長く働いてほしいから、特例で縛らなくても…」という、一見ポジティブな意見を持つ企業もありますが、シニア層を有効活用したい企業こそ、きちんと特例の届出をしておくことをおすすめします。

なぜなら健康や体力の低下に個人差があるシニア層だからこそ、一定の契約期間を設けることで人生に合った働き方を選択してもらえるからです。

企業側も、従業員の能力を活用でき、無用な雇用トラブルを防ぐことができます。まだ特例の届出がお済みでなければ、すぐにでも検討してみてはいかがでしょうか。

 

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