「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」は、事業者とフリーランスとの取引について関係法令等に基づく問題行為を明確にするためのガイドラインで、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で策定・公表されました。

フリーランスワーカーに業務委託契約で仕事を依頼する企業も増える中、契約内容や雇用の実情があいまいなままでは、トラブルに発展してしまいます。そこで今回は、フリーランスが労働基準法の労働者に該当するかどうかの境界について、掘り下げて解説していきます。

令和3年(2021年)3月26日に策定されたガイドラインの目的

新型コロナの流行が拍車をかけたフリーランスの増加、ギグ・エコノミー(インターネットを通じて短期・単発の仕事を請け負い、個人で働く就業形態)の拡大、健康寿命の伸びにあわせた高齢者雇用の充実など、フリーランスの働き方の容認と保護は、国の労働力確保の観点からも重要視されています。

今回のガイドラインは、フリーランスの現状の取引を見直し保護することで、今後の社会保障の支え手、働き手として活かすことを狙いとして定められました。

参考・ダウンロード|『フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン』

※フリーランス取引に使用する契約書のひな形(<別添>本ガイドラインに基づく契約書のひな型例について)は本ガイドラインのP32以降に記載されています。

本ガイドラインにおけるフリーランスの定義

本ガイドラインにおける、フリーランスの定義は以下の通りです。

(引用)『フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン』P2

ガイドラインの概要

本ガイドラインは、以下3つの柱で構成されています。

1 フリーランス取引において事業者が遵守すべき「独占禁止法」「下請法」

  • フリーランス発注時の、事業者の優越的地位の濫⽤規制
  • 発注時の契約書の重要性

2 事業者とフリーランスをつなぐ仲介事業者が遵守すべき事項

  • 仲介事業者の役割
  • 規約変更など一方的な取引条件変更の注意点

3 フリーランスが「雇用」とされる判断基準

  • フリーランスに労働関係法令が適用される場合
  • 労働基準法における「労働者性」と判断基準
  • 労働組合法における「労働者性」と判断基準

企業が注意すべきは、3のフリーランスが労働基準法の労働者に該当するかどうかについてです。

フリーランスの実態が「雇用」かどうかが最大の論点

フリーランスと取引する際、フリーランスと事業者との関係が「雇用」と判断され、労働関係法令が適用されれば、フリーランスにも社会保険の適用や割増賃金の支払いが必要となります。

フリーランスが「雇用」かどうかは実態で判断します。請負契約や準委任契約を結んでいたとしても、実態が「雇用」であると判断されれば労働関係法令が適用となります。そのため、契約形態だけでなく、実際の取引状況を今一度見直すことをおすすめします。

労働者の概念と判断基準

その人が労働者かどうかを知るには、「使用従属性」の確認から始めます。

使用従属性とは聞きなれない言葉ですが、「①指揮監督下の労働であるかどうか」と「②指揮監督下の労働に対して報酬(給与)を支払っているか」を総合的に判断したうえでの総称です。

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① 指揮監督下の労働かどうか

  1. 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
  2. 業務遂行上の指揮監督の有無
  3. 拘束性の有無
  4. 代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素)

② 指揮監督下の労働に対して報酬(給与)を払っているかどうか=====================================

簡単にまとめると、企業の命令で働き、それに対して報酬を受け取っている状態であれば労働者とみなされる可能性が高い、ということになるでしょう。

フリーランスか労働者か、上記の使用従属性で総合的に判断できればいいのですが、まだ曖昧なときは労働者性を補強する要素として「③事業者性の有無」と「④専属性の程度」も加味することがあります。

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使用従属性だけで労働者かどうかを判断しにくいときの補強要素

③ 事業者性の有無

  1. 機械、器具、衣裳等の負担関係(仕事に必要な機械・器具等で、高価なものを受注者が所有、用意している場合は「事業者」の性格が強くなり、労働基準法における「労働者性」を弱める要素となる)
  2. 報酬の額(仕事に対して発注者等から受け取る報酬の額が著しく高額なら、「労働者性」を弱める要素となる)

④専属性の程度
特定の発注者等への専属性が高いと認められるか。 専属性の程度が高ければ、労働基準法における「労働者性」を補強する要素となる。
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このように、労働者であるかどうかは1つの要素で判断できるものではありません。具体的な仕事の依頼方法や、契約内容、労務提供の形態、拘束性や専属性の有無など総合的に見る必要があることを知っておきましょう。

フリーランスにしてはいけない、NG具体例

フリーランスか労働者か…の判断は難しく、グレーゾーンだといえるでしょう。そのためトラブルになったときは、労基署、裁判所、税務署などの調査が入り、実態の調査が行われます。「雇用しなくていいから」とルールを決めずに発注を繰り返していると、企業側にリスクが発生するため注意が必要です。

以下、労働者性があるかどうかを判断するときに役に立つ事例をご紹介します。ひとつでも当てはまれば、フリーランスの領域を超え、「労働者」とみなされる可能性が高いといえます。

1 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する拒否の自由の有無

フリーランスが発注者からの仕事依頼を拒否できないとき、指揮監督下の労働であると判断される要素となります。

フリーランスは、仕事の依頼に対して拒否する自由を有します。欠勤控除や欠勤が続いたことに対しての罰則として、労働者のように始末書を書かせることをしてはいけません。

2 業務遂行上の指揮監督の有無

フリーランスの業務の進め方に対して、発注者が細かく指示を出しているとき、指揮監督下の労働であると判断される要素となります。

【NG具体例】

  • 発注者などから具体的な仕事の依頼、業務に従事するよう指示があったときに、フリーランス自身が受ける受けないを決定できない。
  • 発注者などから指示された業務を、病気やケガなど特別な理由がない限り拒否できない。
  • 業務内容や遂行方法まで詳細に指揮命令を受けている。(運送業務の場合、運送経路や出発時刻の管理、運送方法など)

指揮監督関係が認められるかどうかは、発注者・委託者が通常行う程度の指示であったかどうかがポイントになります。

3 拘束性の有無

フリーランスの勤務場所・勤務時間などが指定され、発注者に管理されているときは、指揮監督下の労働であると判断される要素となります。服装指示についても拘束性に該当します。

ただし演奏業務や建設業の施工管理など、業務の性質上または安全確保のための服装の指示であると合理的と認められる範囲であれば差し支えありません。

4 代替性の有無

他の人がフリーランスに代わって労務提供できるかどうか、フリーランスが自分の判断で補助者を使えるかどうかによって代替性の有無が判断されます。代替性がない場合、指揮監督下の労働であると判断される要素となります。

【NG具体例】

  • 発注者等から受けた仕事を、フリーランスの判断で他の人に依頼できない。

5 報酬の労務対償性

報酬が作業時間をベースに決定されていて「仕事の出来」による増減幅が少ないときなど、報酬の性格が発注者の指揮監督下で一定時間の労務提供に対する対価と認められることがあります。そのときは、指揮監督関係が強化され、労働者性を判断する要素となります。

【NG具体例】

  • 仕事の成果にかかわらず、作業時間に応じて報酬が減額されたり、作業時間が増加したときに追加の報酬が払われたりする。
  • 時間給や日給を定めている

フリーランスとの業務委託契約は、労働基準法の範囲外です。労働時間の管理および、遅刻早退による控除が予定されることは、報酬の労務対償性と認められる可能性が高いとお考えください。

6 事業者性の有無

仕事に使う機械、器具、衣装など著しく高額なものを発注者側が負担していれば、フリーランスの事業者性が弱まるため、労働者性を判断する要素となります。

7 専属性の程度

他の発注者の仕事を成約されたり、報酬に生活保障的要素が強かったりするなど専属性が高ければ、労働者性を判断する要素となります。

8 その他、労働者性を補強する要素

その他にも、フリーランスに発注するまでのフローや事業者の制度を適用しているかなどの観点から、労働者性を判断する要素があるか確認を行います。

【NG具体例】

  • フリーランスに発注するまでの過程が、他労働者と同様の採用フローとなっている。
  • フリーランスの報酬に対して、給与所得としての源泉徴収を行っている。
  • 労働保険の適用対象としている。
  • 事業者の服務規定や福利厚生、退職金制度などを適用している。

フリーランスと取引を行っている事業者が実施すべきこと

2020年以降、会社や場所に縛られず働く人が増えました。会社の業績不振で退職を余儀なくされ独立した…というネガティブな理由もあれば、コロナをきっかけに田舎へ移住してフリーランスとして働きながら生活を楽しむ…というポジティブな理由もあるでしょう。どちらにせよ、日本のビジネスマンに占めるフリーランスの割合が今後も増えていくことは間違いないといえます。

フリーランスと取引を実施している事業者は、現状の契約内容、指揮命令状況などの実態を確認し、契約書を作成していない場合は早急に作成・締結することをおすすめします。その上で今後のフリーランス取引についての社内ルールを作成し、取引中のフリーランスや社内に周知を行いましょう。

フリーランスであっても、企業にコミットしてくれる大切なメンバーです。個人の意思を尊重し、実態に応じた雇用契約への変更なども、正しくコミュニケーションを取って進めるようにしてください。

 

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