2019年4月、「働き方改革関連法」が施行され、「働き方改革」という言葉がニュースで取り沙汰されました。今年、2021年の春にはそれから2年を経過することとなりますが、改革は進んでいるのでしょうか。

「働き方改革関連法」では、とりわけ残業の規制が厳格で、違反があれば罰金が科される厳しい扱いとなりました。社会のありようが変わり、働く人だけでなく親や家族の意識までもが変化しています。

本記事では「働き方改革関連法に定められた時間外労働の上限規制」と、「会社が社員に残業を求める際には、コミュニケーションをきちんととるべき」という2点について解説いたします。

「24時戦えます」がかっこよかった時代もあった

バブル時代には、「24時間戦えますか」とビジネスマンが意気揚々と歌う栄養ドリンクのCMがありました。

実際そのころは、栄養ドリンクをバンバン飲みながら仕事をしていたのです。社会も社員も、仕事は何よりも優先するべきで、長時間の残業は当たり前と考えていた時代です。

今そんな働き方をしていると確実に「ブラック」と呼ばれてしまいますが、当時は過労死は見落とされがちで、過労死が過労死として認識されだしたのは2000年代に入ってからといわれています。

時代の空気を大きく変えたのは、2016年の電通の過労死自死事件でしょう。「度を過ぎた長時間残業は身体と心をむしばみ、突然死や自死を招くことがある」と、遅ればせながら世間が理解した事件でした。

働き方関連法案の「時間外労働の上限規制」は、電通事件によって後押しされ制定されました。過重労働を日本全体の労働環境の問題ととらえ、国が動いたのです。

疲れからくるうつ病や突然死 限度なく「働く」のはもう無理

長時間残業の疲れからくるうつ病も、社会の抱える問題のひとつとなり、命や健康に影響を与えるまでの残業は異常であるという考え方が主流になっています。

インターネットの発達により一般の人々が情報に接しやすくなったことも、残業時間に対する風潮変化の理由でしょう。残業に関する法律がどうなっているのか、今までは専門家にしかわからなかったことも、検索で容易に知ることができます。SNSでのブラック企業の内部告発も盛んに行われ、告発された企業は世間からたたかれるというケースも多く起きています。

「仕事とプライベートは別」
「プライベートな時間を減らしてまで仕事をしたくない」 

若い世代だけでなく、バブル期を過ごしてきたミドル世代からも、プライベートを大切にする声が多く聞かれるようになりました。働く人たちは疲れていたのです。

「時間外労働の上限規制」とは

「働き方改革関連法」の大きな柱は「時間外労働の上限規制」です。

今回の規制ができるまでにも、労働時間の上限を規制する制限は設けられていました。

  1. 法定労働時間 … 1日8時間、1週間で40時間
  2. 36協定 … 時間外労働は、月45時間・年間360時間上限
  3. 36協定・特別条項付 … 年6回まで「特別な事情」が予想される場合のみ上限を延長できる

上限規制があるといっても、多くの会社で36協定の特別条項を利用しての残業が行われています。しかしこの特別条項は、残業時間に上限がなく無制限となっていました。

「時間外労働の上限規制」では、社員を無制限に働かせることは「悪」だと、国が法律をもって企業に知らしめました。この法律には罰則もついています。

法改正のポイントは

時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、 臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、 

・時間外労働…年720時間以内
・時間外労働+休日労働…月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする必要があります。
・ 原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月までです。

【出典】厚生労働省PDF『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』

参考|36協定とは?「特別条項なし」の基礎知識と作成フローすべて

もう「残業してね」だけでは通用しない 残業が必要な理由を説明できますか?

「時間外労働の上限規制」が施行されたことにより、会社が社員に残業を命じるときには正当な理由が必要になりました。

もちろん、業務をするうえで残業が必要になる日もあるでしょう。残業が必要な場合は、会社として判断し、業務を行う必要があります。問題は「残業が必要な理由」を会社が説明でき社員が納得できるかという点と、度を超した残業を求めることはできないという2点です。

今まで、プライベートを犠牲にしても仕事を優先するのが当然と、社員を働かせていた管理職は、部下に残業が必要な理由を明確に伝えなくてはなりません。残業をしなくてはならないのは当然ではなく、相当の理由があり社員の納得を得て行うものとなっています。

また、これから採用する人材には、「残業の意味と必要性、残業の法律とルール」をきちんと説明しておく必要が出てきました。残業に対する知識がなければ、マイナスイメージが先に立ち、早々の離職につながる可能性もあるのです。

いつかは「残業は正しいのか」という疑問に気が付く

いつも、遅くまで会社に残り、鍵をかけて帰るのが習慣になっている社員はいませんか。もしかしたら、すでに何かがおかしいと気付いているかもしれません。

「なぜ自分は毎日遅くまで残業しているのか。起きている子供の顔を見たのはいつだったか。今日も家族は寝てしまっているのかもしれない」という疑問がわいた時に、同時に頭をよぎるのは、転職という2文字です。

世間の流れは、長時間労働NGに傾いています。通勤途中の電車の中で見るSNSの書き込み、深夜に見るニュースでも残業を悪のように流し続けています。「残業はしなくてもいいのではないか」と気づく要素はいくつでもあります。

会社は「残業が必要な理由」を説明するだけでなく、「残業しない」選択肢も準備する必要が出てきました。したくない残業を、どうしてもしなくてはならないのであれば、社員が転職を考えるリスクがあるからです。

社員の働くことに対する意識も変わっています。滞りない業務の流れのために残業が必要な場合には、社員とのコミュニケーションが必要になってきます。残業することが当たり前という意識を持つ管理職はこれから先、業務を止めてしまうことになりかねないのです。

残業をルール化してコミュニケーションをきちんととる

社員が残業について文句を言わないので、問題はないだろうという考えは危険です。残業は常態化してしまいます。毎日の残業が当たり前にならないように、現状を見直し、残業のルールを決める必要があります。

就業規則にルールとして記載し、社員に周知し社員にも改めて残業について考えてもらいましょう。「都度、残業届を出して管理職にハンコをもらう」といった手間のかかる面倒なルールでは続けることができません。

平素より、社員とのコミュニケーションを取るのはもちろんですが、残業の必要な日には、さらに、残業が必要な理由を説明できる態勢を整えておくことが何より重要です。

帰りたいと思いながらする残業では生産性は上がりません。定時後に「働く」ことが本当に必要なのか、納得して働いているのか、残業時間は適切かを、もう一度考える時期に来ています。

 

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