顧問社労士の選び方には「知人の紹介」もありますが、今回はまったく社労士の人脈がなく、ネットからゼロベースで探さなくてはならない企業に向けて、選択のポイントをまとめてみました。

まずは、社労士に依頼できる業務を確認

社労士は「給与計算を依頼する人」「助成金申請を代行する人」「就業規則を作成してくれる人」「人事労務に付随するさまざまなアドバイスをくれる人」など、経営者によって認識がさまざまでしょう。まずはじめに、社労士の業務範囲例を確認してください。

■社会保険
・年度更新、算定基礎届
・助成金の申請代行
・労働者名簿、賃金台帳の調製
・就業規則の作成、変更
・36協定の作成、変更

■労務
・人事や賃金、労働時間に関するアドバイス
・給与計算(税理士に頼む場合もある)
・雇用管理や人材育成、組織コンサルティング など

このように、社労士の業務は非常に幅広い分野にわたっています。小さな会社では経営者や事務担当者が行うことの多い労務管理ですが、専門的で、給与や保険、年金など金銭にかかわる手続きが多いため、適当な管理には大きなリスクが付きまといます。

 

月々もしくは年間で契約する、顧問社労士

企業と顧問契約を結んだ社会保険労務士のことを顧問社労士と呼びます。スポット的に業務を依頼するのではなく、月々・年間をとおして顧問契約を結び、中長期的に企業の労務・社会保険分野をサポートしてもらいます。

顧問社労士と契約をすれば、労働・社会保険分野の複雑な専門業務を任せることができ、年々変わる法律や助成金などの最新情報も得やすくなります。人事労務制度をととのえ、未然に労使トラブルを防ぐことも期待できるため、従業員が安心して働ける職場づくりが可能になります。

なお、顧問社労士と契約を結ぶメリットや、顧問社労士の業務範囲について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

参考|顧問社労士とは? 役割、費用、探し方の具体的ポイントをHRbase PROが徹底解説

ネットで顧問社労士を選ぶときのポイント

ここからは、ネットで顧問社労士を選ぶときに必ず意識したいポイントをひとつずつ解説していきます。

①オンラインor対面、希望のやり取りに応じてくれるか確認する

従来は、連絡をすればいつでも訪問してきてくれるような、近場に住む顧問社労士を選ぶことがスタンダードでした。しかし新型コロナウイルスの影響でオンラインでのやり取りが当たり前になり、地域に縛られず顧問業務を提供する社労士が急増しています。

まずは、あなたの会社がオンラインと対面のどちらを求めるかを決めましょう。対面重視なら、当然ながら「会社のある地域名+社労士」で検索すべきです。逆に訪問不要であれば、オンラインに対応してくれて、遠方であっても自社にマッチする社労士を探していきます。

最近はオンラインと対面のハイブリット型で対応してくれる柔軟な顧問社労士も増えています。

②デジタル化に対応できているかを見極める

オンラインでもいいので、自社に合った顧問社労士を…と思うなら、デジタル化が進んでいる事務所を選んでください。残念ながら、社労士業界のIT事情はまだまだ遅れています。スピード感を求める会社であれば特に重視してほしいポイントです。

就業規則の作成ひとつとっても、就業規則専用のITツールを使いながらスムーズに提案をしてくれる社労士と、Wordや紙媒体のやり取りで進めてくる社労士に分かれます。書類や規程の確認が多い労務管理では、ITツールでコミュニケーションが取れるかどうかが、業務効率化のカギとなるでしょう。

また、やり取りはメールや電話になるのか、Slackやチャットワークなど社内ツールに対応してくれるのかも、契約後の業務効率を大きく変えるポイントとなります。

③得意な業界や分野はあるか、自社にマッチしているかを確認する

前述のとおり、顧問社労士の関わる業務分野は非常に幅広いです。労働問題をメインで扱っている社労士、社会保険の手続きに強い社労士、障害年金や助成金手続きに特化している社労士、特定の業界や企業規模に特化して対応をしている社労士など、そのタイプはさまざまです。

ベンチャー企業、もしくは大企業であれば、特化事務所が存在します。会社規模やタイプによって必要な労務管理は異なるため、特にベンチャー企業は、規模や事業スピードを理解して対応してくれる社労士事務所を探すことをおすすめします。医療、建設、農業、派遣、福祉系のような業種であれば、その業界の内情に詳しい特化事務所も多く存在します。

④業務代行型か、コンサルティング型かを決める

たとえば「社会保険手続きを依頼したい」というニーズがあったとしても、純粋に手続き代行だけを受ける社労士や、プラスアルファで人事労務のアドバイスをしてくれる社労士など、スタイルはさまざまです。

顧問社労士には、業務代行型(アウトソーシング型)と、コンサルティング型の2つのタイプが存在します。業務代行型は、いわゆる1号業務・2号業務の書類作成や提出代行、各種手続きを行ってくれる社労士です。一方、これらの1号業務・2号業務をまったく行わず、いわゆる人事労務コンサルティングを行うタイプの顧問社労士もいます。

どの分野の業務に対して、どこまで対応をしてくれるのか、コンサルティングや情報提供までしてくれるのか? など、細かく希望条件のすり合わせを行いましょう。顧問社労士によっては、固定の価格でパッケージ提案している場合もあるため、公式サイトや問い合わせフォームで、どこまで柔軟に対応してくれるのかの事前チェックをおすすめします。

あとから「依頼したいことを受けてもらえない」「別料金がかかった」ということにないようにしたいですね。

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⑤ペーパー社労士ではないか? 実務経験の有無と、年代をチェック

社労士試験に合格しただけで、実務経験はまったくないペーパー社労士も増えています。社会保険労務士としてサービスを提供している方は、必ず全国社会保険労務士会連合会に登録して証票を持っているので、事前に確認するとよいでしょう。(実務経験は少ないものの、労務に付随する採用や組織開発など、別の知見を持つ社労士も存在します。社労士登録の年数や実務経験の有無だけでは判断できないこともあります)

また、社労士合格者は30代~40代がボリュームゾーンとなっていますが、約4人に1人が50代〜60代です。「開業」という点で見れば、開業社労士の平均年齢は50代です。社会人経験が豊富な世代という点では魅力的ですが、どうしても紙文化が根強く、デジタル化など最近のトレンドに疎い人が多いのも事実です。

年代だけで判断はできませんが、HRテックの知識やクラウド活用スキルがない可能性もあります。「紙対応メインという意味でのペーパー社労士」を選ばないことも、今後は重要な視点になるのではないでしょうか。

⑥人となりや相性・スタンスを知る

人事労務の相談では、どうしても企業の利益追求と従業員の求めるものが相反する場面が出てきます。社労士によっては、「弱者である労働者を守る」というスタンスを貫いている方もいるでしょう。どちらが正解とはいえませんが、企業と従業員のあいだの中立的な立ち位置で、客観的なアドバイスをしてくれる顧問社労士を選ぶのもひとつの手段です。

いきなり顧問契約を結ぶのではなく、ケーススタディなどを用いながら、その社労士がどのようなスタンスで仕事をしているのか確認することをおすすめします。また、経営者独自の判断ではなく、実際に社労士とやり取りをする現場の従業員との相性も、忘れずに確認するようにしてください。

⑦顧問料に無理はないかを検討する

どんなに相性がよく優秀な社労士を見つけたとしても、希望予算から大幅にはみ出てしまっては、継続的な顧問契約が実現できません。顧問契約料は従業員数によって従量課金になる傾向がありますが、何の業務をどこまで委託するのかや、コンサルティングの有無によっても価格は上下するため気を付けましょう。

以下に顧問社労士の価格目安をまとめたので、参考にしてみてください。

【顧問社労士の価格目安】

従業員数 価格
10人以下 2~3万円
30人以下 4~5万円
100人以下 6~10万円、応相談

【業務別の価格目安】

就業規則の作成 15万円~
就業規則の変更 3万円~
諸規定の作成 5万円~
諸規定の変更 3万円~
就業規則の作成+コンサルティング 30万円

※HRbase編集部にて独自リサーチ

ネットで探した顧問社労士と話す前にしておくこと

上記の7つのポイントは、公式サイトを見るだけでは判断できないこともあるでしょう。そのときは、遠慮なく問い合わせをしてみてください。メールのやり取りや、電話の対応などのコミュニケーションで、印象をつかんでみることも重要です。オンラインで30分話すだけでも、相性が見えるでしょう。

ただし問い合わせ前には、目的とする課題についてある程度ネット検索をしておくことをおすすめします。たとえば「解雇トラブルに強い顧問社労士を探したい」と思うなら、ネットで解雇に関する労務知識をざっと把握しておきます。実際に社労士と話してみたとき、「ネットに出ている情報以上のことを知っているか」「より具体的な解決方法を提案してくれそうか」を探るヒントになるでしょう。昨今は、ある程度の知識はネットで手に入ります。こちらも下調べができているということが伝われば、会話のレベルも上がるはずです。

顧問社労士との契約は、年間単位で続いていきます。中長期的な顧問契約を考え、自社に合った顧問社労士を選ぶことが重要です。新型コロナウイルスの影響もあり、労働環境に対する柔軟な対応が企業に求められ、労務管理の重要性も増しています。テレワーク勤務規程、社内チャットツールやSNS投稿に関する管理規程など、時代に合ったルールの作成も求められつつあります。

これからのニューノーマルの働き方に適応するためにも、自社をよりよく発展させてくれる顧問社労士選んでいきましょう。

 
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