新型コロナウイルスの影響で、社労士の営業やマーケティング活動もオンラインへと移行しています。今まで「足で稼ぐ」スタイルを中心にしていた方も、このタイミングでインターネットを活用したマーケティング=Webマーケティングへの切り替えが急務といえます。

今回は、そもそも営業とマーケティングの違いはなにか?を解説した後、社労士がマーケティングによる集客をおこなう需要性やポイントについて、まとめてご紹介します。

社労士の集客の基礎:マーケティングと営業の違い

マーケティングと営業を同じものと認識している社労士も少なくありません。

簡単に両者の違いをご説明すると、営業は顧客に商品を販売する行為であり、マーケティングは商品が売れる仕組みをつくる行為を指します。どちらも顧客に対する活動という点で共通していますが、営業の前段階にマーケティングをおこなうと認識しているケースが多いです。

マーケティングの定義は複数あるため、企業や人によって解釈がやや異なります。マーケティングへの理解を深めるために、さまざまな定義を確認してみましょう。

マーケティングの定義

経営学者ピーター・ドラッカーは、『マーケティングの究極の理想は販売(営業)を不要にすること。顧客を理解したうえで製品・サービスを顧客にあわせ(営業しなくても)おのずから売れるようにすることがマーケティングである』と説いています。

また、マーケティング論で有名なフィリップ・コトラーは、『個人や集団が、製品サービスの価値の創造と交換を通じて、ニーズやウォンツを満たす社会的プロセスがマーケティングである』と提唱しています。

ニーズとは、私たちが生活するうえで必要な充足感が奪われている状態を指しており、そのニーズが顕在化して、特定のものが欲しいという欲望に変化したとき、製品やサービスの購買につながります。ニーズの上に成り立つ欲求が、マーケティング用語でウォンツと呼ばれるものです。

社労士界に置き換えると、「就業規則をつくれないから社労士に依頼しよう」という場合はウォンツであり、「就業規則って何?労務がよくわからないし困っている」という状態はニーズとなります。

そして、これらのニーズ・ウォンツにアプローチするプロセスがマーケティングであると解釈できます。

営業の定義

営業とは、利益を得るために同じ行為を継続的、反復的におこなうことです。物を仕入れて販売する行為を、営業と呼ぶこともあります。ただし先にご紹介したとおり、営業とマーケティングを同じくくりで解釈している企業や個人もいます。

社労士界に置き換えると、「就業規則の作成プランを10万円で販売する」という行為や、「就業規則の作成代行を、企業に複数回提案をする」という継続的な行為が営業と解釈できます。

「紹介営業」が主だった社労士の顧客獲得

これまで、社労士の営業といえば、既存顧客からの紹介営業が主流でした。知り合いから紹介された経営者を訪問して話を聞き、仕事の依頼を受けるという顧客獲得方法です。

紹介営業では、初対面の社労士であっても安心してやり取りしてもらえるメリットがあるため、社労士自らが積極的にアピールをしなくても、顧客を獲得できていました。

社労士の仕事は専門性が高いため、社労士自らがマーケティングや営業活動を行わなくても、自然と問い合わせがくることも多かったはずです。待っていれば自然と顧客獲得ができるため、社労士は営業、販売はおこなうものの、まともなマーケティング活動をしないケースが一般的でした。

HRテックの市場増大とインターネット情報の重要性

しかし昨今では、労務管理がHRテックサービスで代用できたり、地方に住む有名な社労士にオンラインで仕事の依頼ができる時代となりました。

「わざわざ社労士に依頼しなくても、安価なクラウドサービスで満足」
「離れた場所にいても、人気で腕がいい社労士に依頼したい」
このような顧客の増加は、大きな変化です。

あわせて、インターネットでの口コミや情報提供の重要性も増しています。これまでクローズの場で対応できていたクレームなども、すぐにネット上で拡散します。のような時代変化に追い付けていない社労士は、徐々に紹介が減り、待っているだけでは問い合わせが入らなくなっていくでしょう。

ターゲット顧客が全国規模に変化

新型コロナウイルスの影響で企業活動はオンライン化したため、労士の商圏は全国規模に拡大しました。オンライン会議のシステムが急速に浸透し、直接顔を合わせて社労士業務をおこなう必要性がなくなってきています。

もちろん、対面を希望する企業もゼロではありません。しかし行政の申請手続きもオンライン化が進んでいます。感染予防の意味も含め、これからはオンラインコミュニケーションが求められていくでしょう。

社労士はもう、地域密着である必要がありません。

戦略的にWebマーケティングをおこない、ターゲット顧客は全国にいるとして、対面とオンライン双方に対応できる社労士へのバージョンアップが必須です。

社労士業界のオンライン化は遅れている

社労士の平均年齢は約60歳で、IT化に乗り遅れている社労士が圧倒的に多い状況です。電子申請の申請率が、「登記分野、国税分野、社会保険・労働保険分野」の3分野の中で圧倒的に低いことから、オンライン化が進んでいないことがわかります。

 

 

出典|内閣官房IT総合戦略室 行政手続等の棚卸結果等の概要 調査対象期間 平成30年4月1日~平成31年3月31日

Webマーケティングに取り組むのは、電子申請の壁を乗り越えてからという社労士が多いことは予測ができます。だからこそ今、Webマーケティングに取り組みはじめればライバルに差をつけられると考えられます。

Webとリアルのマーケティングを解説

ここからは、地域に対して有効なリアルマーケティングと、全国規模でターゲット顧客を狙えるWebマーケティングに分けて、ご紹介します。

リアルマーケティングとは

リアルマーケティングとは、ニーズを抱えている潜在顧客に対して、リアルな場所でアプローチをする方法です。道路わきの看板や事務所につける大きな看板、直接顧客と顔を合わせる無料相談会やセミナーなどが挙げられます。

企業に新規電話をかけて、社労士分野に関する業務で困っていないか、顧客ニーズを探るテレマーケティング(テレアポ)なども代表的なリアルマーケティングです。

▶看板、バスや電車のつり広告、書籍や雑誌の広告、折り込み広告、DM、セミナー、無料相談会 テレマーケティング、商品パッケージなど

Webマーケティングとは

Webマーケティングはインターネットを活用したマーケティングで、デジタルマーケティングともいわれます。

業務内容や社労士の紹介などが掲載されたホームページの作成や、ブログを配信するオウンドメディア、GoogleやYahoo!の検索エンジンを用いたインターネット広告、FacebookやTwitterなどSNSを活用したSNSマーケティングやインフルエンサーマーケティングなど、手法はさまざまです。

ほとんどのターゲット顧客は、社労士に仕事を依頼する前にインターネットで社労士事務所のホームページを確認します。遠方の顧客だけでなく、近場の社労士を探している企業へもアプローチが可能です。

▶ホームページ、オウンドメディア、インターネット広告(リスティング・ディスプレイ・タイアップ広告など)、ウェビナー、SNS、インフルエンサー、メールマーケティングなど

7つのWebマーケティング手法と、実施するときのポイント

社労士のマーケティングの中でも、Webマーケティングの手法は多岐にわたるため、どれも中途半端に手を出してしまっては意味がありません。

闇雲にWebマーケティングに手を付ける前に、7つのWebマーケティング手法と、おさえておきたいポイントを知っておきましょう。

ホームページ:重要度★★★ 

ポイント:社労士のWebマーケティングにおいて、ホームページ作成は必須です。業務内容や所長の挨拶、得意分野、経歴などを紹介し、問い合わせのメールフォームの設置をおこないましょう。

ホワイトペーパー:重要度★★

ポイント:ターゲット顧客の課題と要因を分析し、課題解決に必要な情報や社労士の提供できる業務範囲を載せた資料です。ただ報告書をまとめるだけでなく、ホームページ内にダウンロードできる仕組みを設け、見込み客(リード)の獲得につなげます。

オウンドメディア:重要度★★

ポイント:ホームページ内または、独立したWebサイトに記事コンテンツを発信します。企業に役立つ労務情報や、法令等の改正情報などをブログ形式で掲載し、検索エンジンからのアクセス数を増加させます。社労士独自の難しい用語ばかりを使用すると、検索エンジンのSEO評価が下がるケースもあるため、SEOを理解した専門家に制作外注するのもおすすめです。

インターネット広告:重要度★★

ポイント:インターネット広告には、GoogleやYahoo!の検索エンジンを利用した広告や、SNSプラットフォームを活用した広告があります。紙媒体の広告よりも、ターゲットを厳選して広告出稿が可能で、予算も柔軟に決められます。インターネット広告は種類が多く、素人では運用が難しいため、専門の広告代理店などに依頼することをおすすめします。

ウェビナー:重要度★★★

ポイント:Web会議のシステムを使ってWeb上でおこなうセミナーをウェビナーと呼びます。Webならではのチャットやり取りや、画面共有機能を使いこなせるかがポイントです。ウェビナー実施後にアンケート実施や、メールマーケティングへの誘導、ホワイトペーパーダウンロードなどにつなげるよう、戦略的な設計が必要です。

SNS:重要度★★

ポイント:SNSは拡散力があり、顧客と直接のコミュニケーションがとれるのがメリットです。無料で利用できますが、業務的に発信をするだけでは顧客獲得が難しいため注意が必要です。

メールマーケティング(メールマガジン):重要度★★★

ポイント:最近のメールマーケティングでは、顧客がメール開封をしたかどうか、メールに記載したURLをクリックしたかどうかを確認することができます。手動でメール配信をせず、専用のマーケティングシステムを導入することをおすすめします。

オンライン時代の顧問業務

もはやWebマーケティングは「やるかやらないか」ではなく、「やらなくてはいけない」施策となっています。上記で多くの施策をご紹介しましたが、はじめから大きく取り組む必要はありません。まずはどの方法が事務所にフィットするかを確かめるためにも、小さく始めてみてください。短い期間で結果測定を行い、予算や事務所内リソースを考えながら進めていけば、1年後には「始めておいてよかった」と感じることができるはずです。

 

New call-to-action  
New call-to-action